Monday, March 14, 2011

科学情報②

またもマイミクさんの日記の転載です。

03/14 14:00 福島第1原発2号機
最初の「空だき状態」 午後6時22分。午後8時ごろ注水が始まった。

という変化が起こる前の日記です。これにより外気に放出されている危険な放射性物質の種類や量など変わっているかもしれませんのでご注意ください。



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・京都大学原子核工学専攻の公式見解ではなく、あくまで個人「秋吉優史」での発信である
・かなりはしょった部分があるので、厳密さに欠けている部分があります。専門家の間でも統一的見解とはなっていない部分もあります。数字、結果の独り歩きには極力注意して下さい。
・より詳しくは、リンク先の専門機関のサイトを見てみて下さい
・違うことが書かれている、と言う部分がありましたら秋吉までご連絡下さい
・心配しすぎるのもダメですが安心しきって舐めるのもダメです。自分の頭で判断した上で行動して下さい。私は全ての安全を保証する立場ではありません。
・安全に非難できるのであればそれは一つの効果的な対処法です。パニックにならず冷静に対処して下さい。 

京都大学原子核工学専攻の秋吉です。
専門は材料屋で、セラミックスの照射損傷とかなので、直接生体と放射線について専門なわけではないのですが、分かる範囲で書いていきます。

とりあえずこの記事にある雨に放射能が・・・ですが、実は、今回の事故と関係なく、雨の「降り始め」には、わずかに自然界の放射線量が増加することが知られています。大気中に含まれる放射性物質を雨が抱えて落ちてくるためです。
今回の件でも、同じ事が起こるためごく僅かに雨に放射能は含まれているとは思いますが、原爆が落ちた後の黒い雨などとは全く異なります。そもそも放出された量が全く異なります。
大体にして、下に書くように人間自身の中に放射能が元々含まれていて、全員が常に被曝しつづけているわけです。量の多い少ないは有りますが全員が 被曝者です。このあたり、様々な報道で「被曝した」と言う表現が使われていますが、極めて不正確な表現なのがおわかりいただけるかと思います。
さらに、元記事中では「被爆者」と言う表現が使われていますが、「爆」の字を使うのは原爆で被曝した場合です。あ、被曝とは、放射線にさらされる、と言う意味です。

放射線にはレントゲン撮影の際に使うエックス線のように、体を突き抜けて行く物があり、体の外に放射線を出す物質があっても影響を受けます。これを「外部被曝」と言います。
これに対して体の中に放射性物質を取込んでしまった場合、突き抜ける力が弱い放射線でも影響を受けてしまいます。これを「内部被曝」と呼んで区別しています。
で、ただ単に体の表面に付いた場合は「汚染」と呼びます。汚れただけなので洗えば取れます。取るのが遅くなるとその間に被曝もしますが、報道では汚染と被曝がごちゃごちゃになっていて分かりづらいと思います。
まあ、被曝、特に内部被曝の評価はとても難しいので、簡単に数字は出せないとは思いますが・・・

色々なところからの質問で、多かった物から書いていきたいと思います。

Q: 放射能が風にのり、作物についたり海に落ちてその魚やら食べたら大変よね?

A:

そもそも農作物には微量ながら 放射性同位元素 = 放射能 が含まれていて、元々含まれている量がきちんと測定できています。もしそれ以上の放射能が入っていたら当然測定することが出来ます。
検出できないと言うことは、元々普段食べているものに含まれる量より少ないと言うことなので、もしかしたらちょっとぐらい・・・などと心配する必要は全くありません。

原子力・エネルギー図面集 (2011年版) の127ページなどが参考です。
元ネタの
http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/nuclear/zumenshu/index.html
が繋がりにくくなっているため、
http://218.224.231.254/~akiyoshi/Temp/
にミラーを 原子力・エネルギー図面集_2011版.pdf として置きました。

全体は 88 Mbyte もあって重いですし、必要なページにたどり着くまで大変ですから、放射線に関係する部分だけを
原子力・エネルギー図面集_放射線_2011版.pdf
として上記アドレスに置いてあります。ファイル名をクリックするか、右クリックメニューで「対象をファイルに保存」等として保存してみて下さい。
このバージョンでは6ページ目になります。

例えば乾燥昆布には 1kg あたり 2000Bq もの カリウム-40 と言う放射性同位元素が含まれています。
また、そもそも人間自体に体重 60kgの日本人の場合 4000Bq も カリウム-40 が含まれています。
この放射性同位元素から常に人間は放射線を浴び続けています。
でも、全く問題になりません。
生物は、太古の昔から放射線にさらされ続けてきたのですから。
放射線を受けて、DNA が損傷してもそれを回復する仕組みが生物には備わっています。
回復できない場合は細胞が自ら命を絶って、後に影響が出ないようにします。
これにより微量の放射線が代謝を高めて健康になると言う説を唱える人も居ます。放射線ホルミシスと呼ばれますが、この単語で検索すると怪しいサイ トがたくさん出てきますので、鵜呑みにはしないで下さい。でも昔からラドン温泉、ラジウム温泉が有り難がられているというのは、何か理由があると思われま す。ヨーロッパでも、ラドンサウナのような物があるそうです。

現在の基本的な考え方は、人間が浴びる放射線の量が増えれば増えるほど発がんのリスクが上昇するという考え方です。これは、非常に線量が高い場合 の統計的なデーターから得られた結論ですが、自然界のレベルに近い領域では、確率が低すぎて他の要因による誤差に埋もれてしまい果たして本当に線量が低け れば低いほどリスクが低いのかは分かっていません。ただ、そう考えた方がより安全に評価できると言うことで、この考え方を元に様々な規制法などが作られて います。

Bq (ベクレル)って何、同位元素? カリウム-40 ってどういう意味?! などは、後でまた詳しく書きます。

とにかく、現状で報道されている範囲では 20km 以上離れた範囲で降り注ぐ放射性物質の量は、心配する必要はないと考えられます。
20km と言う数字は、スリーマイル島での事故で 16km より遠いところには影響が及ばなかった、というのが一つの根拠になるかと思います。(前の日記の、サイエンス・メディア・センターでまとめられた記事を参照)
もちろん、風向きなどで変わってくる可能性はありますが。

なお、チェルノブイリの事故の際に、特定の農産物に特定の放射性元素が濃縮されることが分かっています。
たとえばセシウム-137 はキノコ類に濃縮されやすいです。
(cf. 放射線と人体 暮らしの中の放射線, 研成社, p53 → 以降、この本の内容をたくさん引用しています)
これらについてまず評価することで他の食品はそれらより安全であると言うことが出来ると思います。

また、人体に取込まれた放射能は、ずっと体の中にいるかというと、そんなことはなくてだんだん体外に排出されます。主に尿、後は便や汗としてです。
報道でも出てきたセシウム-137 は最も代表的な放射性同位元素の一つで、核分裂して出来た生成物の中に含まれます。性質はカリウムとよく似ているため、主に筋肉に蓄積されます。セシウム -137 の半減期は 30年程度ですが、次第に排泄されて日本人の場合 85日で半分になるそうです(難しい言葉で生物的半減期と言います)。また、代謝の活発な子供の方がこの生物的半減期は短くて、9-15歳で40-60 日、赤ちゃんでは10-25日で半分に減ります。

また、ストロンチウム-90 と言う核種も、今回報道には出てきませんでしたが、同じく代表的な核分裂で出来る放射性同位元素です。これはカルシウムと性質が似ているため、骨に蓄積されます。
ですが、本来の構成元素であるカルシウムが十分摂取できていればこの沈着量は少なくなります。また、ビタミンDの摂取により骨の代謝が活発になり、ストロンチウムは排出されやすくなります。

特に注意が必要なのはヨウ素の同位体で、前の日記にも書いたとおり、特異的に甲状腺に蓄積されることが広く知られています。摂取後24時間以内に30%程度が甲状腺に蓄積されるそうです。
このため、体内にこのヨウ素の放射性同位体(ヨウ素-131 が代表的核種)が取込まれると、化学的性質は普通のヨウ素と同じですから、甲状腺に取込まれてしまいます。ただし、事前にしっかりとヨウ素を摂取してい て、「満タン」の状態にしておくと、それ以上ヨウ素を摂取してもそのまま体外に排出されます。事後であっても徐々に同位体置換されますから全く無意味でも ありません。I-131 自体の半減期は8日と短いですが、出来る限り早く排出する必要があります。
このため、原子力災害があると、ヨウ素剤が配られることがあります。(安定ヨウ素剤などとも言われますが、放射性でない、安定同位体のヨウ素、と 言う意味だと思います(未確認))ヨウ化カリウムという化合物で、吸収しやすくなっており、急を要する場合に用いられます。ただし副作用もあるそうなの で、きちんと指示に従って服用するようにして下さい。うがい薬などのポピドンヨードは飲むために作られていません。

なお、日本人は幸いにも世界的に見ても極めてヨウ素を普段からたくさん摂取する民族であると言えます。昆布などの海草類にヨウ素が豊富に含まれて いるからです。 このため、比較的放射性ヨウ素の沈着は起こりにくいと言えます。予防的にヨウ素を多く含む食品を摂取しておくと安心だと言えます。

動物実験レベルではカニの殻などに含まれるキチン・キトサンがキレート剤(水の中に溶けている金属をしっかり捕まえる性質がある)として働き、放 射能の排出に効果があるという報告もありますし、アルギン酸ナトリウム(昆布などの褐藻類に含まれる)がストロンチウムの排出に効果的であるという報告も あります。
それ以外にもウォッカが良いとか色々な俗説が飛び交っていますが、要は代謝を高め、利尿促進すれば基本的に体内に取込まれた物質は排出されやすく なります。ので、全く無意味かというとそうでなかったりしますが・・・あまりこれらに振り回されず、そもそも食品中に気にするほど放射能が含まれているか どうかを意識するようにして下さい。これらの情報は今後様々な機関から公表されると思います。

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